SJCスタッフ・管理者のメンタルヘルサーMikoです。過去の記事「①底付き編」「②地獄の離脱症状編」「③奥さんへの告白編」に続いて、今回は「④専門外来受診編(1/2)」をお送りします。
今回の記事では、アルコール依存症専門外来での初診体験と、この病気の特異性である「否認」について詳しくお話しします。
断酒4日目:専門外来への受診
断酒3日目に奥さんへのアルコール依存症疑いの告白をして、迎えた断酒4日目。
この3日間、離脱症状がひどすぎて、不安、頭痛、眩暈、吐き気・嘔吐……全く一睡もできませんでした。
奥さんからの提案でアルコール依存症の専門外来を受診することになりました。奥さんとしては、元々のうつ状態の悪化等の可能性もあるから、ちゃんと受診した方が良いと。
アルコール依存症における受診の特徴

このように、依存症、特にアルコール依存症の場合は、自分から病院に行くというより、家族に促されて来るケースの方が多いと思います。
それくらいアルコール依存症は病識が持ちにくいのです。
病識とは、自分が病気であることを認識し、理解することです。アルコール依存症の場合、以下の理由で病識を持つことが困難です:
- アルコールが脳に与える影響により判断力が低下している
- 日常生活がある程度維持できている間は問題を過小評価する
- 社会的偏見への恐怖
- 断酒への恐怖感
「否認の病」としてのアルコール依存症

アルコール依存症は「否認の病」とも言われています。色々否認したい理由はあるのですが、一番はアルコール依存症ということを認めてしまったら、お酒を飲めなくなるから、これに尽きます。
どんなにアルコールでおかしくなっていても、もうその辛い現実をやり過ごすのもアルコールしかない、そのような状態なのです。
否認のメカニズム:
- 「まだコントロールできている」という錯覚
- 「他の人よりはましだ」という比較
- 「仕事はできているから大丈夫」という合理化
- 「いつでもやめられる」という幻想
- 問題を他の要因(ストレス、人間関係など)のせいにする
専門外来での初診体験
事実、調べて見つけたアルコール依存症専門外来。
たまたま当日受診が可能だったので、その足で奥さんと受診しました。
受付で自分でアルコール依存症であると思う、というととても珍しがられました。
初診でアルコール依存症で自分の足で専門外来に来て、自分がアルコール依存症であるということを認識している患者さんはほとんど見たことがないと言っていました。
幸か不幸か、地獄の離脱症状のおかげで私ははっきりと最初に病識を持つことができたのです。
アルコール依存症診断チェックシート

そして、アルコール依存症診断のために、チェックリストの記載を行いました。もう少し詳細なチェック項目があった気がしますが、概ね以下のようなチェック項目です。
代表的なアルコール依存症スクリーニング項目(AUDIT等):
- どのくらいの頻度でお酒を飲みますか?
- 飲酒するときは通常どのくらいの量を飲みますか?
- 6杯以上飲酒することがどのくらいの頻度でありますか?
- 過去1年間で、飲み始めると止められなかったことがどのくらいありましたか?
- 過去1年間で、普通なら行うべきことを飲酒のためにできなかったことがどのくらいありましたか?
- 過去1年間で、深酒の後体調を整えるために朝迎え酒をする必要があったことがどのくらいありましたか?
- 過去1年間で、飲酒後罪悪感や後悔を感じたことがどのくらいありましたか?
- 過去1年間で、飲酒のため前夜の出来事を思い出せなかったことがどのくらいありましたか?
- あなたの飲酒のために、あなた自身や他の誰かがけがをしたことがありますか?
- 肉親、親戚、医師、その他の医療従事者が、あなたの飲酒について心配したり、飲酒量を減らすように勧めたりしたことがありますか?
衝撃的な気づき

内容を見て拍子抜けしたというか……こんなの大学時代の私がやってもほぼ満点に近くなる内容です。
つまり、よく記憶をなくす、毎日ビール6缶は飲んでいる、酔って人に迷惑をかけたことがある、というのは、ほぼアルコール依存症の入り口なのです。
重要な認識:
- 多くの人が「普通の飲み方」だと思っている飲酒パターンが、実はアルコール依存症の症状である可能性がある
- 記憶をなくすほど飲むのは、既に脳がアルコールの影響を受けている証拠
- 毎日の習慣的な大量飲酒は、身体的依存の兆候
- 飲酒による社会的問題の発生は、アルコール使用障害の重要な指標
医療関係者からの評価
この後、様々な病院で自分がアルコール依存症で断酒していることを告白していますが、どの医師からも大変褒められます。それがどれだけ大変で難しいことか皆分かっているからです。
医療関係者が断酒を評価する理由:
- アルコール依存症の断酒継続率の低さを知っている
- 病識を持つことの困難さを理解している
- 自発的な受診の珍しさを実感している
- 治療への積極的な参加の重要性を認識している
グレーゾーンの方へのメッセージ

この診断基準を見て、「自分も該当するかもしれない」と感じた方がいらっしゃるかもしれません。
それは決して恥ずかしいことではありません。
早期発見・早期対応の重要性:
- 問題が深刻化する前に対処できる
- 家族や社会への影響を最小限に抑えられる
- 治療への取り組みが容易になる
- 回復の可能性が高くなる
私のように離脱症状で地獄を見る前に、ぜひSJCのコミュニティで一緒にお酒のない生活を始めてみませんか。早めの対応が、あなた自身とあなたの大切な人たちを守ることにつながります。
次回予告: ④専門外来受診編(2/2)では、正式診断と薬の処方について、そして医師に言われた衝撃の一言についてお伝えします。
※この記事は体験談であり、医学的なアドバイスではありません。アルコール依存症の診断や治療には、必ず専門医の診察を受けてください。セルフチェックで心配な点がある場合は、早めに専門機関にご相談することをお勧めします。