はじめに
SJCスタッフ・管理者のメンタルヘルサーMikoです。前回の記事「①底付き編」に続いて、今回は「②地獄の離脱症状編」をお送りします。
SJCスタッフMiko:断酒体験記 ~奇跡の5日間 ①底付き編~
この記事には二つの目的があります。
一つは「アルコール依存症になって離脱症状まで出ると大変だ」ということをお伝えすること。
もう一つは「ここまで飲まないでほしい」という警告の意味を込めています。
離脱症状とは
アルコール離脱症状とは、長期間のアルコール摂取により身体がアルコールに依存した状態で、飲酒を中止または減量した際に現れる身体的・精神的症状のことです。

早期離脱症状(飲酒を止めて数時間後に出現)
- 手や全身の震え
- 発汗(特に寝汗)
- 不眠
- 吐き気、嘔吐
- 血圧の上昇、不整脈
- イライラ感、集中力の低下
- 幻覚(虫の幻視など)、幻聴
後期離脱症状(飲酒を止めて2〜3日で出現)
- 幻視(見えるはずのないものが見える)
- 見当識障害(自分のいる場所や時間が分からなくなる)
- 興奮
- 発熱、発汗、震え
重篤な場合は**振戦譫妄(しんせんせんもう)**という生命に関わる状態になることもあります。
※私の場合幻覚(虫の幻視など)、幻聴、幻視(見えるはずのないものが見える)、見当識障害(自分のいる場所や時間が分からなくなる)はありませんでした
私の離脱症状体験
始まりは軽い気持ちから
2018年12月6日の朝、私は大量のストロングゼロの空き缶と空になった睡眠薬のシートを見て、底付きを経験しました。まだこの時点では自分がアルコール依存症ではないと思っていました。「いつもより飲みすぎただけだ」と。
しかし、飲みすぎと睡眠薬のせいもあり、酩酊感、吐き気、頭痛、めまいがひどすぎる状態……。
さすがに少しお酒を控えようか、「そうだ、1週間だけお酒を止めてみよう」。
これが地獄の離脱症状の始まりでした。
1日目:症状の始まり

激しい動悸、不安、めまいにより全く眠れない状況に陥りました。
寝汗がとにかくひどく、着ている服がびちゃびちゃになります。
それでいて数時間後には今度は寒気がする、という感じで体温調整がうまくいきません。
何度も服を着替えて、タオル、毛布を側に用意しました。
また、横になっていても猛烈な吐き気、嘔吐をしてしまいます。
トイレで何回でしょうか……飲んでいる水すら全部吐き出してしまうほど吐きました。
この時点でもアルコール依存症ではなく、まだ二日酔いが残っているかもしれないという淡い期待をしていました。
2日目:症状の悪化

1日目と全く症状は変わりません。加えて、手の震えがひどくなってきました。
よくテレビや動画でアルコール依存症の人が手を震えている様子がありますが、あれです。
相変わらず、寝汗、嘔吐により何度も着替えては、眠ろうとするも、動悸・不安が強すぎて眠れません。
YouTubeのくだらないお笑い――いつもなら笑っているようなもの――ですら、何も目にも耳にも入ってきません。
脳みそを全力で揺さぶったような眩暈と耳鳴りがひどいのです。
全く眠れないことが更に症状を悪化させます。
不安がひどすぎて眠れない、眠れないから不安になる……を丸一日繰り返す。
ついに私はアルコール依存症の離脱症状について初めて調べました。
そして、「ああ、自分はアルコール依存症なのかもしれない、そしてこれは離脱症状なのかもしれない」と気づくのです。
3日目:人生の分岐点

症状はどんどんひどくなります。全く眠れないまま3日目に突入しました。延々とトイレで嘔吐しました。
横になっていると激しい寝汗と寒気を繰り返します。
幻聴と幻覚こそなかったとはいえ、これは全てアルコール依存症の離脱症状と一致していました。
私がアルコール依存症であること、そして断酒しか道がないことを初めて自覚しました。
辛すぎる、あまりに辛すぎます。離脱症状も断酒することも。
気づくと私は家の外のベランダに立っていました。ああ、ここが本当に人生の分岐点だなと。
① 何時まで続くか分からない離脱症状に耐えて、断酒する
② もうこの離脱症状には耐えきれないから、飲んでしまう
③ どちらも辛い、ならいっそベランダから……
本当にそこまで追いつめられました。
恐らく、家族の存在があったから私は①=断酒を選ぶことができましたが、一人だったらどうなっていたか分かりません。
もう飲んでしまおうという気持ちと、飲んだらもう戻ってこれないかもしれない、最後のチャンスかもしれないという思いを繰り返す。何とか耐え抜きました。
離脱症状の危険性について
重要な注意点: 重篤な離脱症状が予想される場合は、医療機関での管理下での断酒が必要です。特に以下のような症状がある場合は、迷わず救急外来を受診してください:
- 激しい震え
- 高熱
- 幻覚や錯乱状態
- けいれん
- 意識レベルの低下
私の場合は幸い幻覚や高熱はありませんでしたが、一歩間違えれば生命に関わる状況でした。
皆さんへのメッセージ

これをご覧の皆さん、どうでしょうか。
アルコール依存症になりたいとは思わないと思います。
しかし、アルコール依存症はお酒を飲む限りは誰もがなりうる病気であり、要は寿命で死ぬのが早いか、アルコール依存症になってしまうかなのです。もちろんアルコール依存症まで進行する人はごく一部ですが。
ここまでひどくない、という方の方がほとんどだと思います。しかし、この記事を読んでいるということは、何かしらお酒で困っていることはありませんか?
アルコール依存症は進行性の病気です。 今は軽い症状でも、放置すると必ず悪化していきます。私のような思いをする前に、ぜひ早めの対策を取ってください。
コミュニティの力

私は上記のような絶望的な状況でも、まさに生死をかけた状況でも、無事断酒継続ができています。それは旧小太郎さんコミュニティのおかげであり、人とのつながりでもあります。
前回の記事で触れたように、今回SJCというコミュニティを立ち上げることになりました。私ほどはいかなくとも、お酒で困っている人、多かれ少なかれいると思います。
半分脅しのようになってしまいますが、私のような思いをする前に、ぜひコミュニティにつながって、一緒にお酒なしの仲間を作りませんか。
一人で抱え込む必要はありません。 同じ経験をした仲間と、専門知識を持つスタッフが、皆さんをサポートします。
次回予告: ③専門外来受診と診断編では、医療機関での治療体験についてお話しします。
※この記事は体験談であり、医学的なアドバイスではありません。重篤な離脱症状が予想される場合は、必ず医療機関を受診してください。アルコール依存症の治療には専門医の診断と適切な治療が必要です。