はじめに
SJCスタッフ・管理者のメンタルヘルサーMikoです。過去の記事「①底付き編」、「②地獄の離脱症状編」に続いて、「③奥さんへの告白編」をお送りします。
SJCスタッフMiko:断酒体験記 ~奇跡の5日間 ①底付き編~
SJCスタッフMiko:断酒体験記 ~奇跡の5日間 ②地獄の離脱症状編~
今回の記事では、アルコール依存症における「秘密と孤独」の問題、そして家族への告白の重要性についてお話しします。
同時に、アルコール依存症が「家族の病気」と呼ばれる理由についても触れていきます。
アルコール依存症の現実を受け入れる
「②地獄の離脱症状編」でお伝えしたように、この離脱症状は一人で耐えるにはあまりに苦しいものでした。特に断酒3日目。全く睡眠が取れない中で延々と不安と頭痛の中、吐き続ける生活にも限界が来ました。
断酒3日目で私はここでようやく悟りました。「ああ、これはアルコール依存症というやつだ」と。
専門家のホームページ、アルコール依存症者のブログ、全ての症状が該当する。もうアルコール依存症で間違いないと。
絶望的な情報との出会い

そして……とてつもなく落ち込みました。
この状態を治すにはどうも今の医療では断酒=酒を一生やめるしかないらしいということに気づいたからです。
どのホームページを見ても、医療記事を見ても、アルコール依存症は断酒以外治らないと書いてあります。
そして、ホームページに浮かぶのは入院の文字。断酒成功率がいかに低いかの文字。
最初の断酒で1年間継続して成功するのは20%以下のようです。
アルコール依存症の治療について
- 現在の医学では、アルコール依存症の根本的治療は断酒のみ
- 「節酒」や「コントロールした飲酒」は不可能とされている
- 入院治療が必要なケースも多い
- 断酒継続率は決して高くない(1年継続率は約20%程度)
- 再飲酒すると同じ状態に戻ってしまう進行性の病気
※2018年当時の状況で、現在は減酒治療も確立されつつあります。
恐怖と妄想の渦

入院?断酒失敗してまたあの離脱症状に戻る?
アルコール依存症と診断されたら自分の会社員人生はどうなるのか。
そして……何より、奥さんに何て言えば良いのだろうか。
そう、体調不良ということで寝込んでいたことにしましたが、もう自分の中ではアルコール依存症であろうことは確定していました。
でも、自分の夫がアルコール依存症なんてことを言ったらどんな顔をするだろう。怖くなりました。
もう普通に働くことも出来ないかもしれない、入院するかもしれない。
そして、大好きなお酒を一生一緒に飲むことは出来ないかもしれない。
離婚という文字が頭に浮かびました。入院、会社員失格、離婚……。
アルコール依存症離脱症状で追い込まれていた私は、頭の中でのぐるぐる妄想が止められず、一人でもがいていました。もう自分の人生はおしまいなんだなと。
秘密と孤独の苦しみ
アルコール依存症は「秘密と孤独」を餌にして悪化していく病気です。
- 家族に心配をかけたくない
- 社会的な偏見が怖い
- 「意志が弱い」と思われたくない
- 「普通」でいたいという願望
- 問題を認めたくない気持ち
これらの気持ちが、問題を隠し、一人で抱え込むことにつながります。そして、孤独感と秘密が症状をさらに悪化させるという悪循環に陥ってしまいます。
決断の時

ただ、何日も寝込んで、急にお酒を止めて、病院に行ってなんて不自然なことも出来ない。
もうどう言われても仕方ない、まずは奥さんに自分の状態を言おう、と決断しました。
本当に小さくなって泣きながら、下を向いて泣きながら、奥さんに告白したことを覚えています。
「ごめん、アルコール依存症になったと思う」
「入院かもしれない」
「会社もクビになるかもしれない」
「本当にごめん」
理解ある言葉

奥さんは言いました。
「アルコール依存症かは分からないけど、飲み方が危ないことは最近気づいてた」
「別に入院しても、会社クビになっても構わない」
「まずは病院に行って、正式に診断してもらおう」
心の棘が一つ抜けるかのように、少し不安が減りました。
そう、依存症は秘密と孤独を餌にして酷くなっていきます。
アルコール依存症かもしれない、と大事な人に言えたことは、離脱症状は相変わらずひどい状態でしたが、私の心を少し楽にしてくれました。
家族の理解の重要性
家族や親しい人への告白が重要な理由:
- 孤独感の軽減:一人で抱え込む苦しみから解放される
- 現実的なサポート:通院や治療への協力が得られる
- 監視の目:再飲酒の防止につながる
- 精神的支え:治療への意欲が維持できる
- 秘密の解消:隠し事によるストレスが軽減される
ただし、全ての家族が理解を示してくれるとは限らないのも現実です。場合によっては、専門のカウンセラーや支援者を通じて段階的に伝えることも必要かもしれません。
アルコール依存症は「家族の病気」

そして、断酒4日目、奥さんとアルコール依存症専門外来を受診することになりました。
私は本当に幸いにも、奥さんの理解を得ることができました。
しかし、アルコール依存症は家族の病気です。「地獄を見たければアルコール依存症の家族を見よ」という格言もあります。本当に家族を巻き込んでしまう、とてつもなく厄介な病気なのです。
アルコール依存症が家族に与える影響:
- 共依存関係の形成(家族が依存症者の世話を焼きすぎる)
- 経済的負担(治療費、仕事への影響)
- 精神的ストレス(不安、恐怖、怒り、絶望感)
- 社会的孤立(恥ずかしさから人との付き合いを避ける)
- 子どもへの影響(アダルトチルドレン問題など)
- 家庭内暴力のリスク
家族もまた、Al-Anonなどの家族向け自助会や専門的なサポートが必要になることが多いのです。
早期対応の重要性

家族を巻き込む前に、グレーゾーンである内に、お酒のない人生を一緒にSJCで歩んでいきませんか。
グレーゾーンの段階での対応が重要な理由:
- 家族への深刻な影響を防ぐことができる
- 社会的な問題が起きる前に対処できる
- 治療への取り組みがしやすい
- 回復の可能性が高い
- 人間関係の修復が容易
「まだ大丈夫」と思っているうちに、一歩踏み出すことが、あなた自身だけでなく、大切な人たちを守ることにもつながります。
メッセージ
一人で抱え込む必要はありません。信頼できる人に相談すること、専門的なサポートを受けること、そして同じ経験を持つ仲間とつながることが、回復への第一歩となります。
SJCでは、家族への告白に悩む方、家族関係の修復に取り組む方も含めて、コミュニティで繋がりを持つことが出来ます。
次回予告: ④アルコール依存症専門外来受診編では、実際の医療機関での診断と治療についてお話しします。
※この記事は体験談であり、医学的なアドバイスではありません。アルコール依存症の治療には専門医の診断と適切な治療が必要です。家族関係に深刻な問題がある場合は、専門のカウンセラーや相談機関にご相談ください。